【TRIZ推進責任者インタビュー①】JNC株式会社:TRIZ導入の取り組み

JNC株式会社 様

独創的な新製品の開発・・・
研究者・開発者の問題解決力の強化・・・
競合他社に負けない強力な特許の創出・・・
企業がTRIZの導入を推進する目的は実にさまざまです。そこで今回はTRIZ導入企業のキーマンとして活躍されている、推進責任者に直接お話を伺いました。
第1回目は、エレクトロニクスの最先端技術である液晶材料や有機EL材料、ナノテクノロジーを応用した精密加工材料、複合繊維や不織布などを製造するJNC株式会社でTRIZ推進のリーダーとして活躍中の知的財産室・室長の吉田尚之さんに、TRIZ導入の経緯から推進の方法、社内展開の進め方、これからの目標などについてお話を伺いました。

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― 本日はお忙しい中ありがとうございます。まずはJNCさんについて教えてください。どんな製品を作っている会社なのでしょうか?またどんなコア技術を持っていらっしゃるのでしょうか?

― 吉田さん
弊社には4つの事業と3つの技術分野があります。まずは技術分野についてお話しますと、1つ目が有機合成化学技術、いわゆる材料を合成する技術ですね。
2つ目は、塩ビから始まったポリマー技術、今現在はポリミド系の材料やシリコン・・いわゆる高分子材料を扱うことに関する技術を持っています。
3つ目として、高分子材料を加工する技術、機能性シートやフィルムに塗布する機能材料、あるいはESファイバーなどの繊維に関する技術です。これらの技術を基に、現在4つの事業分野で製品の開発・生産に取り組んでいます。

1つ目が有機合成技術を用いた液晶や有機ELなどの機能材料分野。
2つ目が繊維に代表される加工品分野。
3つ目はいわゆる従来からの化学品分野。
そして4つ目は、近年力を入れているエネルギー・環境分野ですね。

― 次にTRIZを導入した背景についてお伺いしたいのですがどういった目標の下、どのような形で導入をスタートさせたかお聞かせ下さい

― 吉田さん
実際に導入をスタートしたのは2010年からなのですが、当時3年毎の研究開発中期計画を立案していたところで幾つかの課題を抱えていたんですね。1つは、これはどこの企業でも同じだと思いますが、新事業ですね。弊社の場合、主力である液晶事業およびその周辺技術へと事業分野を拡げてはいますが、やはり次世代の柱となる新しい事業の必要性ですね。しかし次世代ですから明確に形が見えている物でもない・・そういったものがここ数年で順調に育っているかと言えばやはりそうではない・・という問題ですね。

もう1つは研究開発と生産技術、いわゆるR&Dからプロセス、あるいは生産という段階までが必ずしもスムーズに行っていないという問題ですね。研究者レベルで開発したものが実際に事業に辿り着くまでのプロセスが上手くいかない・・というケースが実は多々あるんですよ。さらにその期間が長くなっている・・これだけ競争が激しい中で、より確実にその期間をどれだけ短縮していくことができるのか・・というのが中期計画の中で大きな課題として取り上げられていました。

― 新事業の創出、研究開発プロセスの改善、どちらも大きな課題ですね。プロジェクトを動かすには協力者、あるいは支援者の存在が欠かせないと思いますが実際の体制作りはどのように進められたのでしょうか?

― 吉田さん
はい、執行役員である研究開発本部長によるトップダウンが大きかったです。本部長は当時既にTRIZの概要を存じており、危機感を人一倍持たれていたので、このプロジェクトを立案されました。推進メンバーは、私を含め直接、本部長が選出しました。まずTRIZを進めて行く上では「研修」のようなスタイルを取らざるをえませんでしたが、本部長が推進しているということで、保守的な人の抵抗を抑制出来ましたし、協力者も増えましたね。

― それは強力なサポートですね。
それではTRIZを導入することでどういった状況になることを期待されたのでしょうか?

― 吉田さん
具体的にこの製品、この事業部で・・といったものは当初は想定していませんでした。まずは研究者レベルの開発で作られたアイデアをいかにプロセスへとスムーズに繋げていくか・・そこに重点を置きました。弊社の社員は真面目にコツコツやることは得意なのですが、いかんせん目の前の課題に集中しすぎる傾向が強かったんですね。そういう時こそ一歩立ち止まってみて考える必要があるのではないかと・・そういう意味で考え方を変える、あるいはあらためて見直してみるという点が、TRIZ導入に踏み切った一番大きな理由であり、期待ですね。

基本的には研究部門の中堅・若手の研究員と、プロセスを担う生産技術部門の技術者からのメンバーの選出を考えました。研究からプロセスまでの流れをスムーズにするという目的がありましたので。メンバー間・部門間の連携の向上といった目的も含めてこの2つの部門を対象としました。2つの部門が同じベクトルを共有することが最初の目的でしたね。

― 具体的な教育そして実践はどのように進められたのでしょうか?またどのような成果が得られたのでしょうか?

― 吉田さん
基本的にはアイデア社さんから提案を受けた進め方に沿って、まずは座学としての講演会を各地の研究所・事業所で実施しました。ここでは人数制限は設けませんでしたので、多数の社員が出席していますね。その後、実際の研修に合っているであろう具体的なテーマを選択し、テーマを出した部門の中からメンバーの選抜を行いました。

成果については・・・現在まで幾つものテーマで実践を行ってきていますが、最もスムーズにいったケースとしては、1年ほど前に手掛けた材料開発のための試験機(試作機)でしょうか。まだ製品化までは至っていませんが、ユーザに評価していただけるところまで進んでいますね。具体的なところはお話できませんが、この機器に関してはTRIZで発想したアイデアが数多く採用されていますよ。

研修を通じて感じたことは、やはり習得にはある程度の時間・・・訓練が必要だというところですね。
一方で問題の分析などでは、プロジェクトメンバー全員で研修に参加することで、問題全体を共有するという経験をしました・・・これは大きかったですね。
また、アイデア出しのフェーズで行った網羅的なアイデア出し・・・これも貴重な経験でした。経験の浅いメンバーのスキルアップ、ひいては組織のボトムアップにも繋がったと思います。

― どんなテーマを選ぶのか、どのメンバーをプロジェクトに参加させるのか・・悩みどころですね。ところで、初回の研修以降、さまざまなテーマでの実践を行われたとのことですが、化学的な要素の強い機能性材料の開発などにもTRIZを適用されているのでしょうか?

― 吉田さん
材料そのものの開発となると、まだハードルは高いかもしれませんね。組成そのものを変えるアイデアとなると、まさに“化学”の分野であり、TRIZが得意とする他の分野からの発想からは少し距離があるかもしれません。
ただ機能性材料の生産プロセスの改善となると、ある拠点で取り組んだテーマはまさにそれですね。

機能性材料、特に電子情報材料と言われているものは、「純度」という品質が問われる事例が多いです。そのため、有機化合物の製造工程中の「精製」工程が非常に重要視されます。化合物の性質により精製方法も異なりますから、一つの方法で全ては解決できないので、如何に効率よく純度の高いものを得るかを改善していく必要があります。

そこにアイデアを投入していくという点で、TRIZは有効であろうと考え、試してみました。まだまだ端緒についた範囲だと思いますが、幾つか条件を揃える必要はあるものの、この分野でのTRIZは有効ではないかと考えています。

― それでは最後に今後の展望についてお聞かせ下さい。

― 吉田さん
まず1つは、社内エキスパート・・・と言いますか、手法を実践していくリーダーの育成ですね。もともと導入することを決定した時点でそういった構想はありまして、過去3年間の研修を受けたメンバーの中でそういった人材を見つけていきたいと思っています。ただこれに関しては、本人のやる気というものが一番重要だと考えています。
上からただ『やれ』っていうだけでは難しい役割ですしね。

もう1つは、やはり新規の・・・新たなR&Dをいかに戦略的にやっていくかというところですね。R&Dから生産(事業化)までのスピードをもっと加速させていかなくてはならないと考えていますから。知的財産室としてできることを、発想の支援という役割にまで広げていきたい・・・と考えています。

― 本日はお忙しい中、貴重なお話をありがとうございました。

あとがき

TRIZが初めて日本に紹介されたのが1996年、それから15年以上が経った現在、大手メーカーから中堅メーカーまでさまざまな企業でTRIZの導入・推進が進んでいます。数年前までのTRIZは、大手電機メーカーあるいは自動車メーカーといった、一部の限られた業種だけのものといったイメージが先行していました。確かに公表される事例の多くはこれらの業種に偏っており、それはそのままTRIZの適用可能な製品・技術として定着していたと思われます。

今回お話しを伺ったJNCさんでは2010年の導入開始から足掛け4年に渡りTRIZの推進・展開を進めています。化学・材料といった、これまで導入が難しいと考えられていた業種でも、確実にTRIZの活用が始まっていることが分かります。

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