【TRIZ推進責任者インタビュー③】オリンパス株式会社:TRIZの活用を拡大する7つのソリューション

オリンパス株式会社 様

開発手法で開発プロセスの改善に取り組む。
TRIZが日本に紹介されてから15年あまりが経とうとしています。その間、さまざまな業種、さまざまな企業でTRIZを始めとした開発手法を導入・推進するための組織的な取り組みが行われてきました。
手法の推進責任者にお話を伺うインタビュー企画第3回目は、映像技術、医療用の内視鏡などで業界をけん引するオリンパス株式会社の推進リーダー緒方氏にお話を伺いました。

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― 本日はお忙しい中ありがとうございます。
まずはオリンパスさんの概要、主な製品や技術について教えていただけますか?

― 緒方さん
オリンパスというと一般的にはやはりデジカメといったイメージがあるかと思いますが、このデジカメと録音機に代表される映像事業、そして内視鏡に代表される医療事業、最後に従来からの主力である顕微鏡や、工業内視鏡や検査装置に代表されるライフ産業事業、この3つが当社の柱となる事業です。

― 続いて緒方さんの所属されている部門と、そのお仕事について教えてください。

― 緒方さん
私の所属しているのものづくり革新センターは、オリンパスの3つの事業体(カンパニー)に対して、開発から製造まで支援を行うという立場です。そこで主に全社的な科学的手法の推進を担当しています。

― 『科学的手法』というお言葉がありましたが、具体的にはどういったものを指すのでしょうか?

― 緒方さん
コアとなっているのは、やはりQFD,TRIZ,タグチメソッドの3つの手法ですね。後ほどご紹介させていただきますが現在私たちのところでは、目的別なアプローチということで『7つのソリューション展開』というのをやっておりまして、そのベースになっているのがこの3手法になります。

― 3つの手法推進が活動の中心というわけですね。それでは、これらの開発手法を導入するに至った経緯について教えていただけますか?

― 緒方さん
もともとQFDや品質工学(タグチメソッド)は、社内の品質関係の部門で技術者に向けて各々単独で教育をやっていたんですが、そこにTRIZも含めてやっていこうとなったのが2009年頃ですね。
当時の開発本部長クラスの集まりで、『技術者にも共通言語が欲しいね・・』ということになりまして、他社もベンチマークして、QFD、TRIZ、品質工学をコアとして私たちの部門で推進していこうということになったんですよ。
当時はTRIZだけが教育を実施していませんでしたし、手法間の連携もやっていませんでしたので、外部からの講師ということでアイデアさんにお願いをするということになりました。

― 社内展開には苦労も多かったのではないでしょうか・・・ご苦労なされた点、またそれに対しては、どのようなアプローチで対策をされたのでしょうか?

― 緒方さん
QFDで課題設定をして、TRIZでコンセプトのアイデアを出し、品質工学で最適設計をする・・理想的な流れではあるんですが、すべてがその流れに当てはまる技術課題ではなかった、というのは大きな課題でしたね。ユーザである開発者のニーズもさまざまでしたから、そのニーズにどのように適応していこうかというところは悩みましたね。

もう1つは教育を行う際のボリュームですね。特に2009年当時というのは、リーマンショック直後ということもあって、残業の規制など、開発者には時間的にかなり厳しい時期でしたからね。研修に多くの時間を割いてもらうというわけにもいきませんでしたので、いかに短時間で基本的な部分を教えるかということにはかなり工夫しました。

― 短時間に集中的な講義を行う訳ですね。具体的にはどれぐらいのボリュームになったのでしょうか?

― 緒方さん
一般的には各手法とも数日を必要としますが、基本的な考え方と手順を教えるということで90分に圧縮して実施しました。当然のことながら全てを教えることはできないのですが、やり方としては開発者が取り組む様々なテーマに必要な手法を選択してもらって、テーマ開始時に90分の講座を設定するという方式を採りました。

― 実務テーマとセットにした上での90分ということですね。時間的な制約が厳しいことを考えて、教育がそのまま実践に繋がるようなシステムにした訳ですね。

― 緒方さん
そうですね。ただしどんなケースでも90分という訳ではなくて、まだ経験が少ない若手の技術者を対象として、演習を通して手法を理解する講座も設定しました。品質工学は2日、QFDとTRIZはセットにしてこれも2日という研修です。

― 先ほども少し触れられていましたが、貴社では目的別に手法の活用法をカスタマイズされているそうですね。この点について詳しく教えて下さい。

― 緒方さん
私どもでは『7つのソリューション』と呼んでいるのですが、このソリューションが出てきた背景としましては、先ほども申し上げましたように様々な技術課題がある中で、QFDだけとか、TRIZだけといった1つの手法だけで応えられるかというと、そうではありませんでして、目的別に複数の手法や、手法の途中のプロセスを組み合わせるということが必要になるんですね。

例えばTRIZは、問題解決のプロセスという視点で考えますと、問題を定義するまでに、原因分析をやったりだとか、論理的なアプローチが幾つもあるんですね。そういった手法の中に含まれている途中のプロセスなども有効に活用してもらいたいと思いまして、その部分を切り出して、例えば『原因分析ソリューション』という形になった訳です。

手法ありきという考え方ではなくて、目的に合わせて必要な手法、あるいは手法の途中のプロセスをカスタマイズして使ってもらうという流れですね。

― 『7つ』という数字には何か特別な意味があるのでしょうか?

― 緒方さん
そうですね。もともとQFD、TRIZ、品質工学の3つの手法をコアに考えていましたので、その目的別のソリューションとなると、当然ながらそれよりも増えてくる訳です。しかし、仮にバリエーションを10個以上に増やしても、多すぎてユーザには伝わりにくい・・・ということで少なくもなく多くもない、一番覚えやすいというところで7つにしようというのを当初から考えていました。
今、この7つの中にそれぞれ技術者が直面する課題というものを当てはめることができましたので、これからもこの基本路線は変えずに進めていくつもりですね。

― 次に、現在の推進状況について教えていただけますか?教育を受けられた人数や、年間どれぐらいのペースで、テーマ実践を行われているか、差し障りのないところでお聞かせください。

― 緒方さん
教育については、昨年のTRIZシンポジウム(2013年9月開催)で発表させていただいたのですが、スタート当初の2009年を1とすると、2013年はその約2.5倍といった割合になっています。テーマの数は年間で細かいものを含めて200テーマを越えるぐらいの件数ですね。

― それでは最後に、今後の展望について教えてください。

― 緒方さん
一つは、7つのソリューションに関してですが、これをスタートさせたのが2011年の終りぐらいでして、まだ2年経つか経たないかといったところです。このスタイルとなってから、それぞれのソリューションに合ったテーマの相談を受けている訳ですが、これまではQFD、TRIZ、品質工学などの手法視点でカスタマイズしてきた内容を、今度はソリューションとして一般化させることを考えています。

― 手法で訴えることからより分かり易いソリューションへと看板を掛けかえた・・ということでしょうか。
今後はそこから更なる進化をお考えなのでしょうか?

― 緒方さん
そうですね。私たちの場合は、社内のニーズにできるだけ沿った内容という視点で3手法を考えてきましたし、適用事例を通じて随分とノウハウも蓄積させてきた訳でして、今度はこの7つのソリューションという視点でそれぞれをカスタマイズしていかなくてはと考えていますね。

もう一つは、このソリューションに合わせて、教える側もレベルアップしていかなくてはならないということですね。当然ながらより一層のスキルの向上が必要になると考えています。
これまでであれば、例えばQFDだけを教える講師や、TRIZだけを教える講師はいたわけですが、ソリューションになると、組み合わせる力が重要になります。3つの手法の基礎的な知識は勿論のこと、それを応用できる能力が必要になってくるわけです。

実際の場面では、さまざまなソリューションを繋いで利用していくことになるんですが、この繋ぎの部分の共通の考え方:コンセプトと呼んでいますが、教える側もこのコンセプトを理解した人である必要があると考えています。そういった人材の育成が今の課題ですね。

― 本日はお忙しい中、貴重なお話をありがとうございました。

あとがき

インタビュー内でも紹介させていただいた『TRIZシンポジウム』は2014年現在、企業におけるTRIZ推進の具体例を聞くことができる数少ない場となっています。そして今回のインタビューも、このTRIZシンポジウムでの同社の発表をベースにお話を伺わせていただきました。

企業内での推進状況が公開されることが少ないという理由だけでなく、今最も注目を集めているのが、同社による手法推進の活動であると思われます。試行錯誤の中から生まれた『7つのソリューション』は、これからTRIZを始めようと考えている推進担当者、全社的な手法展開を考えている企業にとって、一番のお手本になるのではないでしょうか。

同社における今後の推進活動はこれからもきっと多くの人の関心を集めることになると思われます。

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