【TRIZ推進責任者インタビュー④】株式会社デンソー:大手自動車部品メーカーにおけるTRIZ推進

株式会社デンソー 様

国内企業におけるTRIZ導入の歴史は自動車メーカーでの導入を抜きにして語ることはできません。
導入時期や導入のスタイルなどはさまざまですが、ほぼ全ての完成車メーカーが何らかの形でTRIZの導入を試みています。
TRIZをはじめとした開発手法の導入を進める企業の責任者にお話を伺うインタビュー企画。第4回目は、国内はもとより世界でも指折りの自動車部品メーカーである、株式会社デンソーの久永氏、竹中氏のお二人にお話を伺わせていただきました。

image346

― 本日はお忙しい中ありがとうございます。
まずは御社の概要、製品などについて教えてください。

― 竹中氏
弊社は1949年設立の自動車部品メーカーです。製品として一般的に有名なのはカーエアコン、それからナビゲーションですね。その他にもメーターやエンジンルーム内の制御機器など、さまざまな製品を開発・製造しています。特にエアコンに関する技術には自信を持っていますし、その他にも世界No.1の製品というのもいくつか持っていますね。

― 運転者が普段目にするものから、目には見えないが安全をサポートしてくれるものなど、さまざまな製品がある訳ですね。それでは次にお二人の所属されている技術企画部という部署、その役割について教えていただけますか?

― 竹中氏
私自身はまだこの部署に入って2年目なのですが、技術企画部の中でもとりわけ、私たちの所属しているR&D企画室では全社的にR&Dへテーマを提供するといった支援業務ですね。その活動の1つがTRIZを始めとした開発手法の推進になりますね。

― 全社的なR&Dの支援、その1つがTRIZということですが、御社でのTRIZ推進がスタートしたきっかけは何だったのでしょうか?

― 久永氏
始まりは2003年ですので、ちょうど10年になりますね。当時の弊社技術トップの副社長が韓国のSamsungを訪問した際に、SamsungでのTRIZの積極的な取り組みと成果を目にしたことがきっかけでした・・・。
で、これはデンソーとしても取り組まなければ、という問題意識を持ったのがそもそもの始まりです。

副社長の号令のもと始まった推進だったのですが、当時の推進部門は技術企画部ではなく、弊社の基礎研究所でした。アイデア社さんとのお付き合いもその時から始まっていまして、導入のためのコンサルティングをお願いしていますよね。

― 基礎研究所がスタート地点なのですね。TRIZを実践していたのも研究所のメンバーということでしょうか?

― 久永氏
当時、基礎研究所に青野という人間がおりまして、彼が推進を担っていたことは間違いないのですが、ユーザとしてTRIZを実践するのは基礎研究所に限っていた訳ではないんですよ。
導入を進めるに当たっては、早い段階から全社的な展開を意識して動いていました。開発系が多かったはずですが、全社的にテーマを出してくれという形で進めていましたね。

具体的には、アイデア社さんのコンサルティングのもと、ワークショップを展開していったんですが、私もこの活動にユーザの立場で参加していた一人でして、それがTRIZとの出会いでしたね。

― 副社長さんの肝いりプロジェクトだったとのことですが、当時の成果と言いますか、受講されたユーザの皆さんの反応はどうだったのでしょうか?

― 久永氏
正直にお話ししますね。私自身は、これはなかなかたいしたものだという感想でしたね。見事に整理された理論体系ということで関心しましたよ。理論のベースが特許ということもあって、技術者との相性もいいんじゃないかと思いましたね。

ただ成果という意味では、まぁ期待が大きすぎたっていうのもあるとは思うんですが、ものすごい発明ができるんじゃないかという期待したものは出なかったですね。でも悪くはないねという感想でしたよ。ただね、もう勘弁してくれっていうのがセットになった評価でしたね。

― それは成果そのものが期待したものでは無かったということでしょうか?あるいは研修の時間や労力という意味での重さが原因だったのでしょうか?

― 久永氏
そうですね。どちらもといったところなんですが、実はそもそもワークショップの受講者が指名制だったということが大きかったと思いますね。俗にいうやらされという感じが強かったんじゃないでしょうか。

― 会社としてはやるべきだが、いざ自分がとなると、なかなか手ごわいぞといったところでしょうか。

― 久永氏
そうですね(笑)ただ、10%から20%ぐらいだと思いますが、影響を受けたという受講者もいたと思いますよ。
現に私がそうでしたから。TRIZは面白いなと・・継続的に使っていきたいと感じましたね。

― では、その後の推進はどのように進められたのでしょうか?

― 久永氏
次の仕掛けも早かったですよ。2005年だったと思いますが、推進部門を技術管理部に移しまして、TRIZを標準ツールとして定着させていこうと取り組みが始まりましたね。そのための専門部署もできました。
最初は2人からのスタートだったのですが、TRIZ専門部隊として5名が中心となって推進活動を進めていきました。実はそこで大きく方向性が変わった・・というよりも定まったというべきなんですかね、“具体的な成果を出すTRIZをやろう”ってことになったんですよ。

具体的にどういうことかと言いますと、時間がかかり過ぎるという現状を変えていこうというのが1つ、もう1つはもっと成果にこだわろうということでした。それと並行して進めたのが社内講師の育成ですね。
これが2006年頃だったと思います。第一段階がアイデア社さんのワークショップ中心とすると、ここからが第二段階と言えるかと思います。

― 第二段階に入って、進め方はどのように変わったのでしょうか?

― 久永氏
一番は教育の部分をばっさりと省いたというところですね。TRIZありきではなくて、実際にやっている中で覚えていこうという感覚ですね。必要になった時にバックボーンとしての理論を紹介していくというスタイルで、社内の指導を行っていましたね。そこからの数年はずっと試行錯誤でしたね。社内講師のスタンスにも依るのですが、私の場合は毎回の実践が新しいことを試す場でもありましたね。

― 自社の技術者に合うTRIZの実践法を模索された訳ですね。
導入から10年という期間が経ち、現在の活動としては具体的にはどのように進めているのでしょうか?

― 久永氏
2012年までは年間20件ぐらいのテーマ数をこなしてきていますが、2013年に技術企画部に移ってからは少し減りましたね。指導回数としては、私は27回ですね。それ以外にも教育というのもやっていまして、入門編が250名ぐらいが受講してます。応用編もありまして、こちらは60名ぐらいが受講してますね。

― 教育の場として、入門編と応用編の2コースがあるとのことですが
具体的にはどのような内容で実施しているのでしょうか?

― 久永氏
入門編というのは、TRIZとは?からスタートして、発明原理、進化パターン、物質‐場分析などのツールの紹介と演習を実施しています。これは1日でやってますね。また、技術開発センターでは必修プログラムとしてTRIZ研修を実施し、毎年100名ほどが受講しています。

― 竹中氏
応用編は、実際に世の中に出ている製品を題材として、問題分析からアイデア出しまでの、いわゆる問題解決の流れを演習で体験するという内容ですね。ここで扱うのは自社製品ではなくて、誰もが知っている製品ですね。TRIZ的な問題解決を体験するといった目的で実施しています。

― では、今後の展望、目標についてお聞かせいただけますか?

― 竹中氏
世界一の製品を出す!というのも大きな目標ではあるんですが、やはり現実的には特許ですね。より強い特許を出していくということですね。それから後継者の育成でしょうか。私と同じ仕事ができる人間を育てていくことですね。
ただ、成果については評価することが本当に難しいんですよね。特にTRIZの成果というのはなかなか見えにくいものですからね。私たちの中では4つの物差しで成果を考えているのですが、これら全てが目に見えないものなんですよね、ですから評価も当然ながら難しくなるんです。

  1. めざましいコンセプトが生まれたか
  2. 斬新なアイデアが出たか
  3. プロジェクトを推進させることができたか
  4. 技術者としてスキルアップが図れたか

サイレント・サポーターと呼んでますが、研修後に良かったと感じてくれた受講者もなかなか積極的には発言してくれないですからね。反対にノイジー・クレイマーもいっぱいいますけどね(笑)

― それでは最後に、これからTRIZを推進しようとしている企業担当者、マネージャーの方に向けてメッセージを頂戴できますでしょうか?

― 竹中氏
興味を持たれたのだとしたら、まずはやってみるということですね。
きっと期待するものは大きいと思いますので、そのためにもまずはやってみて評価するということですかね。

― 久永氏
TRIZを社内でどのように伝えるか、社内推進者の方はよく考える必要があると思います。誰に何を伝えるべきなのか、最初は本人も理解できていないものですよね・・私がそうでしたから。進んでいる道が間違っていないかをいつも確認することが、推進者に求められるものだと思います。

― 本日はお忙しい中、貴重なお話をありがとうございました。

あとがき

足かけ10年という長期に渡る推進活動は、今回のインタビューだけで収まりきるものではなく、同社における推進の試行錯誤のほんの一面しかご紹介できていないのかもしれません。

多くの企業がそうであるように、導入の初期は手探り状態からスタートするもので、デンソーさんも例外ではありませんでした。弊社によるコンサルティング(ワークショップ)というサポート以降は、専属部隊とそこに所属されている社内講師の皆さんが、長い年月をかけて自社に最適なTRIZを模索されています。

大変にお忙しい中、貴重なお時間を頂戴しました、久永氏、竹中氏のご両名にあらためて感謝を申し上げます。今後の貴社における増々のTRIZ推進・活用に期待いたしております。

TRIZ書籍無料ダウンロード
TRIZ理論の紹介書籍を無料公開中です。具体的な事例を交えながらTRIZ理論の基礎・活用方法をご紹介。
こちらのフォームよりお申込みください。
お問い合わせ
052-930-6655